Memory of Night
第8章 花火
「だって今、ものすごくそんな感じのシチュエーションだし」
「……っ!」
その途端、宵は自分の今の体勢を改めて思い出してしまい、慌てて晃から体を離した。
その今さらすぎる反応を見て思わず苦笑してしまう。
「キス以外は何もしないから。いいだろ?」
言いながら、宵のところへにじり寄る。
「せ、せまってくんな……っ」
「三回だけ」
「三回かよ!」
「じゃあ二回」
「……っ……」
ずいぶんと勝手で図々しい言い草だ。
宵は怒って、手の平を振り上げた。
だがその手が晃の頬を叩く前にキャッチするのは簡単だった。
だって、宵の抵抗は本気じゃない。
「ダメ?」
ねだるような視線を灰色の瞳に向けながら、晃がそっと宵の手首に唇を寄せる。
宵はぐいっと腕を引っ込めた。
随分な拒否られように、晃は軽く肩をすくめる。
そして、真摯な面持ちで告げた。
「今日だけだ。これで君を付き合わせるのは最後にする」
「……え?」
戸惑いの声を上げた宵に、晃ははっきりと頷いた。