Memory of Night
第8章 花火
どうせ見込みがないのなら、身勝手すぎる自分の気持ちなどさっさと切り捨ててしまった方がいい。
自分を見つめる灰色が、その冷たさを含んだ色が、今は少しだけ痛かった。
それでも未練がましくキスをねだる自分に呆れながらも、やっぱり諦めることはできなくて、宵の返答を待つ。
もう無理矢理するのは嫌だった。宵の同意が欲しかった。
ただ黙って待ち続ける晃に宵は何も言えずにいたが。
「……勝手にすればいいだろ」
やがて瞳をそらしてつぶやいた。
どこか投げやりな返答に晃は困ったように笑む。……一応、同意ととってもよいのだろうか。
晃は宵に少しの間目を閉じさせ、ほどこしたメイクを親指の腹で落とした。
最初に目元のアイシャドー、次に口紅、手の腹全体でファンデーションも。
宵はわずかに身じろぎすることはあっても抵抗はしなかった。
最後に結んでいた髪を解き、髪飾りを手渡した。
ほつれた髪を手ですいてやりながら、晃が言う。
「大和撫子終了ー。やっぱりいつもの宵の方がいいな」
「……自分で提案したくせに」
「似合ってたよ」
「どこが」
「ん? 全部」