Memory of Night
第8章 花火
そうして唐突に、夜空を見上げた。
「ずいぶん遅くなっちゃったな。もうすぐ花火も終わるし、帰ろうか?」
宵も上空を見上げると、確かに花火は終盤を迎えていた。さきほどのような華やかさは失われ、弾けた火花が残像を残しながら闇に飲み込まれていく。
辺りにも、人の気配がちらちらと見え始めていた。
晃がベンチを離れ、一人歩き出す。
もう触れない。
その言葉を裏付けるように、いつもみたいに宵の手を引くこともなく。
決別を告げるような態度だった。
何かがひどく寂しくて、晃の背中が小さくなり闇に吸い込まれて見えなくなるまで、宵はその場を動けずにいた。