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Memory of Night

第8章 花火


 先ほどの発言には一切触れずに、どちらかと言えば、先ほどの発言などなかったことにしているかのように、晃は言った。

 宵は何も返せずに、ただ晃に視線を向けたまま。

 今回の祭はただ遊びに誘われただけかと思っていた。買われたわけではなく、ただ遊びに来ただけなのだと。

 でも違うらしい。結局今回も晃は金を払う気でいるらしい。

 それは、宵にとっては喜ぶべきことのハズなのに、どうしてもそういう気分にはなれなかった。

 晃がふいに立ち上がる。

 宵に視線を落としながらつぶやいた。


「ごめんね。もう宵には何もしない」

「似たようなセリフ、前にも聞いた」

「今度は本当だよ。……もう触れない」


 晃は自分の拳を軽く握ってみせた。

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