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Memory of Night

第9章 予感


 学校が始まって二週間ほど過ぎた木曜日。

 外は朝から雨が降っていた。窓を叩くような激しい雨音が、一日中耳にまとわりついて気分が悪くなる。

 宵は保健室で一人、課題のプリントに取り組んでいた。

 今は五限、数学の時間だ。

 別に体調が悪いわけでも怪我をしたわけでもなかったが、教室にいるのがどうしても嫌で逃げてきてしまった。

 主な原因は、晃との夏祭り。あんなに必死で隠していたのに、結局はバレてしまったらしい。

 いや、正確に言えばまだバレてはいない。クラスの何人かに疑われている程度だった。

 今日は数学の先生が出張のため、自習だった。監督の先生もいなくて、そのせいでいろいろと質問攻めにあったのだ。

 女子の耳をつんざく甲高い声にも好奇の視線にもうんざりしてしまって、適当な理由をつけて保健室に逃げてきてしまった。

 今日中に提出しなければならないプリントを一応持って。

 周りは静かになったのに、宵はプリントに集中出来ずにいた。

 シャーペンを放り出し、柔らかいソファーに体を深く沈めながら、祭の日のことを思い返す。

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