Memory of Night
第9章 予感
あの日は結局、姫橋公園を出て晃の家で自分の服に着替え、ようやく宵が自分のアパートに戻ったのは九時を少しまわった頃だった。
トータルすると十時間以上晃に振り回されていたことになる。一体何をしているんだか。
祭の日以来、晃とはまともに顔を合わせていない。もともと宵は一組、晃は四組で接点などほとんどなかったから。
学校が始まってから渡すと言った金も、封筒入りで始業式の日に宵の机の中に入れてあった。そのため、晃と言葉は交わしていないのだ。
狭い学校、たまに廊下や移動教室などですれ違うことはあったが、お互い目さえ合わせずに通り過ぎていくだけだった。
(また気に入った相手探して抱いたりとかしてんのかな)
ふとそんなことを思う。
最初の頃の自分への執着が、今は嘘のように思える。
泣かせてみたい。狂わせてみたい。宵は俺のモノ。俺に甘えればいい。
――好きだよ。
「……っ……」
頭に浮かぶ晃の言葉を振り払うように、宵はかぶりを振った。
調子のいいことばかり言って人に説教までかましたくせに。
どうせあんなのただの気まぐれだったのだ。