Memory of Night
第9章 予感
「何人落とせたの?」
まだ顔をニヤつかせたままそんなことを聞いてくる。
「うっせーな。いちいち覚えてねーよ」
「わっ……」
軽い悲鳴にしまったと思った時には遅く、プリントの横に転がっているシャーペンを投げつけてしまっていた。
シャーペンは明の右腕に当たり、ソファーから転がり落ちてしまう。
「ごめんて。そんな怒んないでよ」
明は怒った様子もなく、笑みを消すことのないままソファーから立ち上がる。
そんなところも含め、明のノリは本当に男のようにサバサバしていてつい遠慮を忘れてしまうのだった。
「いーよ。俺が取るから……」
ころころと床を転がるシャーペンを追いかけようとする明に、そう言いかけた時だった。
突然明が床に膝をついた。そのままぺたんと座りこんでしまう。
「……明?」
様子がおかしい。
膝をついて明の顔を覗き込むと、やはり真っ青な顔をしていた。頬や唇からは、みるみる赤みがなくなっていく。
「だから寝てろっつったのに」
「……だって……」
座っているのもつらいのか、明は体を追って前屈みになりながら弱々しく反抗する。