Memory of Night
第10章 雨
本当は心配だった。せめて手術の成功を確認するまで志穂の様子を見届けていたかったけれど、確かに自分がいたところで何ができるわけでもない。
それに弘行の言葉なら、信用できる。
弘行の言葉はいつも的確だったから。
「わかったよ。明日また来る。志穂さんのこと、よろしくお願いします」
「ああ、任せなさい」
弘行は頷いた。
宵は志穂を一瞥し、もう一度弘行に頭を下げて病室を後にした。
病院を出ると晃が待っていた。
宵は晃に志穂の容態と、手術が明日行われることを話した。
「俺も、明日病院行っていい? 委員会の用があるから少し遅れるけど」
無言でうなづく宵に、晃もありがとうとだけ返す。
気が付けば雨は止んでいた。
傘を下ろして空を見上げれば、どんよりとした重たい雲の切れ間から、陽光がわずかに差し込み始めている。
季節は秋に近づきつつあるけれど、日はまだまだ長い。
眩しさに、宵が片目をすがめる。
雨は止んでも、胸の内にどんよりと溜まった鉛のような胸騒ぎは、一向に治まる気配はなかった。