Memory of Night
第11章 罠
翌日、その日の授業を終えるとすぐに宵は病院に向かった。
志穂の手術は夕方から。できればその前に、わずかでも顔が見たかった。
昨日の豪雨でところどころ水溜まりのできた裏通りを走る。
雨は降らないまでも、雲行きは怪しい。
空は灰色のぶ厚い雲に覆われ、陽光を遮断していた。そのおかげで辺りは薄暗い。
不気味なほどに人気のない、狭い道の端で――ふいに笑い声がした。
くつくつと、低く、喉を鳴らす音。
宵は、足を緩めて声のした方を振り向いた。
裏通りの端の方、建物と建物の間のさらに狭いたまり場に、数人の男達がいた。
壁が死角になっているため宵の位置からは三人しか見えない。
髪を派手に染め、体中に装飾品をつけたガラの悪い連中だった。
全く見覚えのない、その男達の視線が宵に集中する。
口元を歪め、嘲笑うような品定めでもするような笑みを浮かべ、宵を見つめていた。
「なんだ、マジにかわいー顔してんじゃん」
「だろ?」
「男でもイケんじゃん? 経験ねーけど。な?」
一人が、後ろの男へと呼びかけた。