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Memory of Night

第11章 罠


 志穂の手術費用は集まった。あとは弘行が、きっと望みを叶えてくれる。

 志穂を助けてくれる。

 宵は金髪の手首を掴んでいた手を放した。

 それが酸欠からくる痺れによるものなのか、自らの意志によるものなのか、自分でもよくわからなかった。


「――宵!」


 その時、突然自分を呼ぶ声が聞こえた。幻聴かと思ったが、その声は一度だけでなく何度も聞こえた。

 閉じていた瞳を、わずかに開く。

 不良達がざわめき出していた。


「……バい、……れかに見……かったっ」


 金髪の仲間の誰かの声。


「くそっ」


 焦りを含んだ声音でそう吐き捨てて、金髪男が一際強く宵の首を締め上げる。


(……きら)


 意識を完全に手放す寸前、白く濁った視界の中で、怒りに燃えた晃の姿を見たような気がした。

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