Memory of Night
第11章 罠
「……っ……」
徐々に気管が圧迫されていくのを感じる。
金髪は時間をかけて、宵をいたぶるつもりらしい。まだ呼吸はできる。
きつく眉根を寄せて肩を上下させる宵に、金髪は再び問いかける。
「このじゃじゃ馬が。好きでヤりまくってたわけじゃない? だったら、なんでそんな真似してたんだよ?」
金髪からの好奇の視線。
それを受けて考える。
なんで? そんなの決まっている。志穂の手術費用が欲しかったからだ。
志穂は身を削って、自分を育ててくれた。そのせいで長い長い入院生活を強いられてしまった志穂を、なんとしてでも助けたかった。
そのための効率的な手段が、体を売ることぐらいしか思いつかなかっただけだ。
「……うっ……」
首にかかる男の手の力が強まる。苦しさに、目の縁からは涙が滲んだ。
意識が霞み、目の前の金髪の顔がぐなゃりと歪んだ。
そんな朦朧とする意識の中で、ふと思う。
このまま死んでしまっても、別に構わないんじゃないかと。