Memory of Night
第12章 吐露
――夢なのか現実なのか、ずっとわからずにいた。
何もないただ暗いだけの空間の中で、宵は足場の悪い瓦礫の上を歩いていた。
一歩踏みしめる度に、足元は揺らぐ。細かい砂利が、ぱらぱらと落ちていく。
どこに落ちていくのかも、よくわからなかった。
上も下も絵の具を塗りたぐったように黒一色。前も後ろも、見える景色はただそれだけだ。
夢を見ているような気もしたし、これが現実のような気もした。
どこまで行っても、多分明かりは見えない。それがわかっているのに進み続けるのは、宵にはひどく面倒なことのように思えた。
立ち止まり、そっと下を見下ろす。
足場の悪い場所で、足を踏ん張って立ち続けるのはそれなりに労力を使う。
いっそ落ちてしまおうか、なんてとりとめのないことを考えていると、ふいに右手が熱くなるのを感じた。
見るとそこだけ、白い光が灯っている。
暗闇の中でその一ヶ所だけが光っている。
そこから伝わる温かさは、まるで染み入るように全身に広がって、宵はそのぬくもりにすがりつきたい衝動にかられていた。