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Memory of Night

第13章 吉報


「やっぱ絶対食いきんねー。明、どら焼きだけじゃなくて他のも持ち帰っていいよ。つか全部食え、全部」

「そんないらんわっ」


 拒否しようとする明の手に、冷蔵庫から取り出したお菓子を適当にのせる。


「だって……これ宵に渡してって頼まれたヤツなのに」

「……俺は甘いの苦手なの。どうせ誰かにおすそ分けするくらいなら、明が食っても変わんねーじゃん」


 このままここに置いておいても腐らせてしまうだけ。

 捨ててしまうのも気が引けるし、看護婦なんかに配り歩くのもどうかと思う。

 明に返しに行かせるのはさすがに酷いと思うので、ここはやっぱりどうにかして食べてもらうしかない。


「わかったよ。じゃあ遠慮なくもらってきまーす」


 そう答えて、両手に抱えたお菓子の山を困ったように眺める。


「……紙袋使っていい?」

「どーぞ」


 宵が赤い紙袋に手を伸ばす。カラの割には重量があって、あれ? と思う。

 中を覗き込むと、呆れたことにまだ中身があった。

 それは食べ物ではなく、タオルとトランプと、バラの造花。


「これも見舞いの品デス」

「……」


 もう言葉も出ない。

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