Memory of Night
第13章 吉報
「いや……それはその……」
弘行は顔を伏せ、言いづらそうに言葉を濁らせた。
「もしかして……あの人まだどっか悪いの?」
宵が不安げに顔を曇らせる。
弘行は慌ててかぶりを振った。
「違うよ。そういう話じゃないんだ」
「じゃあ、何?」
宵が訝しげに顔をしかめる。
だが、弘行はわずかに顔を赤らめるだけでなかなか口を開かない。
「……なんだよ? 前に俺の病室で言いかけてたこと?」
確か、志穂さんが退院したらなんちゃらかんちゃらと言っていた気がするが、高熱で意識がはっきりしていなかったためかおぼろげな記憶しかなかった。
「……ああ」
蚊の鳴くような返事が一つ。
宵は弘行の次の言葉を待った。
弘行はしばらく視線を宙に泳がせるだけで、なかなか続きを言わない。
いつも立ち居振る舞いや話し方などスマートにことを運ぶタイプなので、こういう反応は本当に珍しかった。
そして数秒後。ようやく宵に向き直ったかと思ったら、意を決したように叫んだ。
「結婚したいんだ……っ!」
「結婚!?」
突然出てきた結婚という単語に、宵も叫ぶ。