Memory of Night
第13章 吉報
弘行が目をみはる。だがその顔は、すぐに力強い笑みに変わった。
「任せなさい」
あまりに自信たっぷりに言うものだから、つい吹き出してしまう。
「まだ昼休みでしょ? 会いに行かねーの?」
「宵くんは?」
「俺はいーよ。さっき会ってきたし」
というよりも、入院している間はなんだかんだ志穂と会っていた。
病室が同じ階だったので顔を合わせることも多かったし、自分も暇を理由に志穂の病室には足を運んでいたから。
弘行はしばし迷っている素振りを見せていたが、宵にもう一度促されるとしぶしぶ頷いた。
「じゃあ、俺も帰る。今までお世話になりました」
頭を下げ、手荷物を持って応接室を出ようとした時だった。
「あ、宵くん! そういえばあの手術費用の出所をまだ聞いていないよ。一体どこでバイトしてたのかちゃんと説明しなさい」
(……なんでこのタイミングで)
あまりの間の悪さに、宵はあやうく舌打ちしてしまうところだった。
ドアの前で立ち止まり、くるりと振り返る。
「キャバクラ」
「へ?」
動きを止めた弘行がはっとした時にはもう、宵の姿はなかった。
パタン、とドアが閉まる重たい音だけが室内を満たす。
(またはぐらかされてしまった)
弘行はやれやれと軽くため息を吐き出し、肩をすくめた。
だが、その口元は心なしか笑んでいた。