Memory of Night
第13章 吉報
外に出ると、風が冷たかった。空が曇っているわけではなく、今は昼過ぎでまだ太陽は真上にあるのに、肌を焼くような蒸し暑さがなくなっているためだ。
半袖では、少し寒いかもしれない。
(もう夏も終わりかな)
宵は太陽を見つめながら、一度大きく深呼吸した。
入院していた期間はたった十日ほどなのに、長い間外の空気を吸っていなかった気がする。
ひんやりした空気が肺を満たし、心地よい解放感に宵はそっと伸びをした。
入院中はなんだかいろいろなことがとんとん拍子に進み、退院してからは多分その事後処理に追われることになるだろう。
学校に行くのを酷く憂鬱に感じながらも、一番頭を悩ませているのは晃のことだった。
宵は目を閉じて、数日前の明とのやりとりを頭の中で反芻した。
「あと伝言も一緒に預かってるんだ」
「晃から?」
「うん。『覚悟ができたら俺の家までおいで』って――」
また何かの罰ゲームだろうと明はおもしろがっていた。そんな様子を思い出し、宵が灰色の瞳を細める。
(……たく。一体なんの覚悟だっつーの)