Memory of Night
第13章 吉報
そうつぶやいてはみるものの、なんとなくの察しはついていた。
志穂の手術費用を晃に出してもらった時に晃が言っていたことだ。
いつか宵が俺に抱かれてもいいって思う時がきたら、その時は抱かせて、と。
つまり、抱かれる覚悟ができたら来いということだろう。
なんだそりゃ、とは思うものの、笑い飛ばす気にもなれない。
宵は、松葉杖を握る自分の右腕を見つめた。
今日の服装は黒い半袖のTシャツ。剥き出しのままの腕にはまだうっすらと痣やすり傷の痕が残っている。
布地で隠れた場所には、紫色に変色した注射器の痕もある。
こんな醜い肌をさらしたくはなかった。せめて、これが全部消えたら。
晃の声を思い出すと、冷たい風の中でも体が熱くなっていく気がした。
その理由もその気持ちの正体も、もうわかっていた。
謝罪だったり事後報告だったり、晃に会いに行く口実なら山ほどあるのだ。
いろいろなことにケリがついて、もう少し言いたいことがまとまったら、今度は自分から会いにいこうと、そう決めた。