Memory of Night
第14章 聖夜
――聖夜だ。
晃は自分の部屋のベッドの上で、窓から夜空を眺めながら思った。
雲のかけらすらない空は濡れているみたいに艶やかで、星もいつもよりも多く見える。翳りのない月は明るくて、部屋の灯りなど必要なかった。
今は、十月下旬。外は少し冷えるけれど、窓は開け放したままでいた。
夜の澄んだ匂いがする。
こんなに綺麗な夜は、今まで見たことなかったような気がする。
(……宵に会いたいな)
ふと、そんなことを思う。
こんな夜が、きっと宵にはよく似合う。
不良達との一件から、一ヶ月半あまりが経とうとしていた。
宵と連絡の取り合いなどはしていないし、病院で顔を合わせたりもしていない。
と言っても晃の両親は院長と看護婦。たいていの処置は家でできる。
晃の怪我は左腕の骨折だけだ。骨がきちんとくっついているか、レントゲンで調べるために病院に行く以外は、ほとんど自宅療養だった。
だから余計に顔を合わす機会がなかったのかもしれない。
宵が退院してからは学校ですれ違うことはあったけれど、言葉を交わすことはしなかった。