テキストサイズ

Memory of Night

第14章 聖夜


 ずっと、君のことを考えていた。

 そんなふうに告げると、宵は照れたように晃から視線をそらし、それでも何か言いたげに晃を見た。

 どこか、物欲しげな目。


「学校でもそんな顔してたよな。……誘ってるつもり?」

「そんなわけねぇだろ」


 間髪入れずに返ってくるのはやっぱり否定の言葉だ。

 宵は晃に右腕を差し出した。そうされて初めて気付く。宵の手には白い箱が握られていた。


「何?」

「たいしたもんじゃねーけど……ケーキ。晃って、甘い物平気?」

「うん、大好きだよ」


 見舞い品らしきそれを受け取りながら、晃はにっこり笑って頷いた。


「ありがとう。わざわざ買ってきてくれたの?」

 そう問いかけると、宵はつかの間言葉を探すように視線をうつろわせた。

 月の光でうっすらと浮かび上がる灰色の瞳が、一度瞼の奥に消えた。

 もう一度瞳を開くと、意を決したように口を開く。


「ずっと……晃に謝ろうと思ってて。だいぶ遅くなっちまったけど……」

「宵」


 晃が名前を呼んで言葉を止めさせる。そのまま宵の腕を掴んでベッドに座り込んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ