Memory of Night
第1章 誘い
相手は、誰でもよかった。……金さえ払ってくれれば。
南風(なんぷう)高校二年、大河(たいが)宵は、男女問わず人気を集める校内のアイドル的存在だった。
漆黒の髪と灰色の瞳。人形のような、中性的で整った顔立ち。キレイな顔立ちとは対称的な、乱暴な言葉遣いをする。
そんな彼が金で誰とでも寝る、という事実を知る者は少ない。
男でも女でも関係ない。相手の容姿さえ、宵にとってはどうでもよかった。
宵にとってそういう行為は、金を稼ぐ為の一つの手段でしかなかい。
一連の行為が終わり相手の男が理科準備室を出ていった後も、宵はしばらくそこを動かなかった。
久しぶりだからか妙なけだるさを感じていた。こんな時間帯、どうせ誰も来ないだろうと判断し、少しだけ休んでから帰ることに決めた。