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Memory of Night

第3章 秘密


 病院の見学なんて、学校の体験授業などを通してやるものだと思っていた。

 個人で勝手にしていいのかとも思ったが、両親がここに勤めている上父親が医院長なら、そういうわがままも通るのかもしれない。


「宵は、お見舞い?」

「……まあ、そんなとこ」


 曖昧に答える。

 この病院に志穂が入院していることは、できれば知られたくなかった。

 他人に詳しく詮索されたくなかいし、干渉されたくない。


「誰の?」

「誰でもいーだろ?」

「そういうことは言わない言わない」


 晃はひらひらと手を振ると、唐突に宵の手を取った。

 指をからませるように握られ、宵の体がビクッと反応する。触れられた部分がかぁっと熱くなった気がして、宵はその手を振り払おうとしたが、


「よし。それじゃ、二人でもう一度お見舞い行こっか?」

「はあ? なんでおまえが…っておい!」


 宵の言葉も聞かず、晃はドアの前に立つと『大河志穂』と書かれたプレートを一瞥した。そうして宵の腕を引いたまま、ノックをして中に入ってしまった。

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