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Memory of Night

第3章 秘密


 そこに立っていたのは、意外な人物だった。


「……晃」


 思わず名前で呟くと、晃はニコッと笑った。


「そう言えば、初めてじゃない? 君が俺の名前を呼ぶの」


 突然そんなことを切り出され、ああ、と呟く。


「そうかも」


 今までは、あんたとかてめえとか、そんなふうにしか呼んだことなかった。ただ、晃も自分のことを名前で呼んでいたから。

 とりあえず、今気になることはそれではない。


「なんであんたがこんなとこにいるんだよ?」


 見たところ、晃はケガをしているようにも具合が悪いようにも見えない。


「母さんの忘れ物を届けに来たついでに、病院内を見学させてもらってるんだ」

「見学?」


 怪訝な顔で繰り返す宵に、晃は後ろの病室を指さした。


「今入っていった看護婦、俺の母親なんだ。俺、将来医者になるのが夢だから、時々見学させてもらってる。ちなみに父さんもここで医院長やってるよ」

「ふーん……」

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