Memory of Night
第16章 終章
薄着というか、厚めのセーター一枚だけらしい。
宵はここに来る前に寒くないのか聞いたけれど、晃は首を振って大丈夫だと答えただけだった。
朝食の代わりに近くのコンビニで肉まんを買って、すっかり白く染まった道を眺めながら歩いた。
あいにく今日は日曜日。なんの予定もなかったので暇と言えば暇だけれど、朝寝坊くらいはゆっくりしていたかったというのが宵の気持ちだ。
「なんか、顔が見たくなっちゃって」
降り積もった雪を手の平に乗せながら、晃が言う。
裏もなく、屈託のない笑顔でそんなことを言われれば悪い気はしないけれど。
(なんか不機嫌になるたんびに甘い言葉でごまかされてる気がする)
それはそれで腹が立つことこの上ない。
「……てかさっきから何やってんの?」
宵は晃の手元を覗き込んだ。
晃の視線は自分の手元に集中している。
さきほどすくいあげた雪を地面の上で丸め、ぎゅっぎゅっと固めていた。
「宵にプレゼントしようと思って」
「……雪だるまとかいらねぇからな」
「……もうバレた」
晃は声をあげて笑った。