Memory of Night
第16章 終章
人気(ひとけ)のない雪景色の中に、笑い声がこだまする。
晃の瞳はまだ雪の中に向けられていた。
丸い雪の塊を一つ作り終え、二つ目に取りかかっている。
晃のマイペースな行動にはもう慣れてしまっていたからいちいち気にはしないけれど、雪だるま作りに熱中している様子は子供じみていてかわいい。
手持ち無沙汰を理由にその横顔をしばらく眺めていると、晃が突然くるっと振り向いた。
同時に、手についた雪をぱっ、ぱっ、と何度か払う。
宵の首に巻かれた深緑色のマフラーの端を掴んで引き寄せてから、唇に一瞬だけのキスをした。
「こんなとこで……」
「平気平気。人なんていないよ」
確かに、見渡す限り人の姿はゼロ。
姫橋神社は姫橋公園の奥の方にある。祭りやら何やら特別なイベントが行われている時は別だが、普段はほとんど人がいないのだ。
公園の出入り口から遠いのも、過疎になる原因の一つではあるのだろう。
だが姫橋公園自体はこの辺りの地域では大きくて有名な公園だから、訪れる人は多い。
散歩のためにここを訪れた宵たちだったが、雪のせいで子供の数が多く、避けてるうちにこんな奥まで歩いてきてしまったのだった。