Memory of Night
第16章 終章
「いや、宵がマフラー巻いてくれるなんて珍しいから。日頃の恨みでも込めて絞められるのかと……」
「へぇー。恨まれてる自覚はあるんだ」
宵は灰色の瞳をわずかに細め、口元を歪めた。
どこか威圧的な笑顔で探るように覗き込まれる。
とりあえず、晃も曖昧に笑っておいた。
確かに今日のように強引なやり方で宵を誘って、気まぐれに振り回すことも多くあった。
ベッドの中では相変わらず手荒な扱いをしてしまっているし、それが原因で宵を怒らせてしまうことも幾度もある。
それでも、どんなに怒らせてしまっても、宵が甘い言葉に弱いことも知っていた。
唇を包んで愛の言葉を囁けば、多少の理不尽さは許してくれる。
「恨まれてる自覚なんてないよ。宵にめちゃくちゃ愛されて、大事にされてる実感は山ほどしてるけどね」
「……絞め殺すぞ」
その言葉と共にマフラーをぐっと握られる。
もちろん絞め殺されるのはごめんなので、晃はやんわり宵の手を握って制した。
雪の色にも似た宵の白い指先。きめの細かい肌はさわり心地がいいけれど、寒い中にずっといるからか酷く冷たかった。