
Memory of Night
第16章 終章
温めてやろうと思い当たり、宵の手をぎゅっと握って何度かさすった。特に拒まれることもなかったので、そのままさすり続ける。
服越しにでも肌の温度が伝わりそうなくらい近い場所に、お互いがいる。そんな距離が、最近では当たり前になっていた。
自分の手を差し出した状態のまま晃に好きにいじらせながら、宵の視線はすでに別の場所に向けられていた。
遠くの雪景色を眺め、時折作りかけの雪だるまに目線を移す。
続いて、二人でここを訪れた時にできた雪の上の足跡を見つめ、眠たそうに一度あくびした。
宵の一連の動作を見つめながら、ふと思う。
初めて会った時は人形のようだと思ったのに、今じゃそんな印象すっかり崩れ果ててしまった。
中性的で綺麗な容姿は相変わらずだけど、表情が意外とコロコロ変わるから。
一番目にする機会が多かった気がする不機嫌そうな表情や、最近やっとちらちら見せてくれるようになった笑顔、ふとした時にこぼれ落ちる自然なままの素顔。
もう見慣れてしまったはずなのにやけに新鮮に感じるのは、きっと数日前にばっさり切ってしまった髪のせいだ。
