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Memory of Night

第3章 秘密


「また来るって」

「今度はプリンおみやげに買ってきてよ?」

「わかったよ。カロリー一番高けーヤツ買ってきてやるよ」


 軽い嫌味と共に病室を出ようとする宵に、志穂が付け加えるように声をかける。


「無茶はしないでね?」


 宵が振り返る。

 無茶というのは、宵が集めている金に対しての言葉だろう。


「……志穂さんも体、大事にしろよ?」


 宵は頷いて、どこか遠慮がちなニュアンスでそれだけ返した。

 そうしてそのまま部屋を出ていってしまう。


(――志穂さん?)


 宵の言葉に、晃は違和感を覚えていた。

 どうして母親なのに、名前で呼ぶのだろう。

 さっきほほえましく感じた親子の距離が、なんだか遠くなったように思えてふに落ちない。


(別に俺には関係ないけど)


 宵が志穂のことをどう呼ぶかなんて、赤の他人の晃には全く関係ないことだ。

 それでもなぜか気になった。

 宵の志穂に対する態度が、どこかよそよそしく思えたから。


「母さん。俺、宵と帰る」

「でも彼行っちゃったわよ?」

「うん、追いかける。ごめん、また今度見学させて?」


 晃は慌ただしく部屋を出た。そうして早足に、宵の後を追った。

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