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Memory of Night

第3章 秘密


「あら? 宵、手首どうかしたの?」


 その時ふと、志穂にそう声をかけられ宵は顔をを向けた。

 手首、というのは、リストバンドで隠していた包帯のことだろう。


(相変わらず鋭いな……)


 志穂は昔からこういうのを見つけるのがうまかった。宵がケンカなどで小さなすり傷を作って帰ってきた時も、なぜか必ず見つけてしまうのだ。

 そしていつも、強引だけれど丁寧に手当てをしてくれた。

 心配げな顔で起き上がろうとする志穂を遮り、宵は視線を合わせるようにかがんで膝をついた。


「なんでもねーって。ちょっとぶつけただけ」

「気を付けなきゃダメよ」

「うん」


 志穂はそう言うと、宵の手を取り、静かに包帯に触れた。

 その優しげなしぐさを見て、若くてもやっぱり母親なんだな、と思う。

 そして宵も、その手を引っ込めることはなかった。

 親子なのだし当然なのかもしれないけれど、やっぱり心が和む光景だな、と晃はほほえんだ。


「じゃあ俺、そろそろ帰るよ」


 ふいに宵が立ち上がって言う。


「もう?」


 志穂は不満げに口を尖らせた。

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