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Memory of Night

第3章 秘密


 人並み程度。

 確かに運動は、小さい頃から喧嘩なんかをしてとびまわっていたからできる方かもしれないけれど。


「それに宵は、綺麗な容姿も持ってる」

「……そんなもんあったって、何の役にも立たねーんだよ……ッ!」


 宵はぐっと拳を握りしめた。


「誰の役にも立ちゃしねーんだよ……」


 金があれば、あの人の病気を治すことができる。頭が良ければ志穂を、喜ばすくらいはできた。

 でも容姿なんて、どんなに良くても何の役にも立たない。

 顔を背け、声を押し殺すように言う宵に、晃はふと思って言った。


「……本当に、志穂さんのことが大好きなんだね。宵は」


 宵が顔をあげる。

 宵の示す『誰』が、血のつながらないあの母親のことを言っているのだとわかった。

 日は沈み、辺りは真っ暗になっていて宵の表情はわからない。

 何も言わない宵の頬を片手で包み、晃は唇を、宵の耳もとに寄せた。

 唱えるようにゆっくりと、宵の中に言葉を吹き込む。


「だったら、俺の役に立てばいい。俺のものになれば、その綺麗な容姿をたっぷり使ってあげるよ」

「……何を、させる気?」

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