Memory of Night
第5章 玩具
学校に着くと、すでに晃は待っていた。
体育館の袖のところにもたれかかり、宵を見つけると手招きする。
「おはよ」
「……もう昼だぜ」
「早くに呼び出してごめん。宵にしておきたいことがあったから」
「して……おきたいこと?」
そのどこか意味深なセリフに、宵が眉を寄せる。
晃のことだから、どうせろくなことでないことは目に見えている。
「とにかく中へ」
晃が体育館に、宵を誘う。まだ、誰もいない体育館は妙に静かだった。
(一時間しかねーのに……)
晃は何をする気だろう。
体育館は、午前中はバスケ部が使っている。午後に講習の準備があるためか、体育館の鍵は開いていた。
そうして晃が宵を連れ込んだ場所は、体育館の隅にある用具室だった。
そこにはボールやマットや跳び箱など、授業や部活で使う道具がところ狭しと詰め込まれている。
部屋自体も狭くて、ものが詰め込まれているせいもあり、人が五、六人やっと入れるスペースしか空いていない。
晃は宵に、積み重ねられたマットの上に座るように促した。
この部屋には、鍵はついていない。