Memory of Night
第1章 誘い
……女装をして一日デート。そんな要求は初めてだった。
(コイツ変態か……?)
「そんなん、フツーに女とすればいいだろ? 金払ってまで俺に頼むことじゃ」
「俺は君がいいの」
宵の言葉を遮り、ニコッと笑って晃が言う。普段は相手に冷たい印象を与える切長の瞳が、途端に柔らかくなった。
宵は少し考えて答える。
「なら、五万払ってくれればいいよ」
「五万? セックスより高いんだ」
「デートってことは一日だろ? セックスなんて一時間で終わるんだよ。それに、オプションつくならそれなりの上乗せがあるのは当然だろ?」
宵がにやりと笑ってみせると、晃も声をあげて笑う。
それから宵の顔をもう一度じーっと観察しながら声を密めて言った。
「……じゃあさ、縛ったりとかもいいの?」
「しば……っ?」
随分とアブノーマルな提案に、宵が目をしばたかせて晃を窺う。
「これならいくら?」
「いくらって……」
そんなもの、要求されたことがないのだから値段のつけようがない。
答えあぐねいている宵を見て、晃は再び声をあげて笑い出した。
その反応に、宵はむっとなる。
「あんた俺のことからかってねーか?」
「いや、一応提案は全部本気だよ」
それはそれで複雑だけども。