Memory of Night
第1章 誘い
晃の言葉に、宵はほっと胸をなで下ろした。
どうやらこういうことを、まったく知らないわけではなさそうだ。さきほどの相手が男だとバレても何も言わないということは、そういうことに偏見もあまりないのかもしれない。
「ちげーよ。恋人なんかじゃない」
「ならセフレ?」
「ただの金儲け」
宵は学生ズボンのポケットを探り、さっきの男から受け取った三万円を晃に見せた。
「金さえ払ってくれれば、なんだってするよ。あんたもやる?」
試すようにそう尋ねた。半信半疑だったが、晃は意外にも、それを拒否しない。
しばらくの間万札を見つめ、宵に視線を戻した。
「男ばっか誘ってんだ」
「別に。誰だっていーよ、相手なんて」
晃は思案するように腕を組んだ。
それから宵のあごを軽くつまんでクイッと上向かせた。
「キレイな顔してるもんなぁ、君。大河……宵君だっけ?」
「そーだよ」
短く答え、晃の指を振り払う。
鬱陶しさに、思わず睨みつけてしまう。
「本当に、なんでもするの?」
「するよ」
「じゃあ、女装なんてどう?」
「……は?」