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Memory of Night

第5章 玩具


 宵が顔を上げると、離れた場所で薄く笑ってこちらを見ている晃と目が合った。

 晃だ。晃がリモコンの操作をして振動を強めたのだ。


「アイツ……んっ」


 熱の溜った体が苦しくて、宵は自分の体を両手でギュッと抱きしめた。強烈な快感に、視界が霞む。

 宵の様子に周りにいた生徒達が何事かと集まってきた。

 ざわついた館内で、一つの声がする。


「――宵、どうかしたの?」

「……!」


 反射的に宵が顔を上げる。

 人の波をくぐり抜け、宵の前でひざまづいたのは晃だった。

 心配するそぶりを装って、宵の顔を覗き込んでくる。


「顔、赤いね。熱でもあるんじゃない?」


 白々しい演技。うんざりする。

 睨みつけると、晃は宵の額に自分の額を当ててきた。


「な……!?」


 晃に触れられ、体がびくんとはね上がりそうになる。

 耳元で囁くように晃が言った。


「お仕置きだって言ってんのに、また別のヤツと楽しげに話しているなんて。……いい度胸だね」

「は、話すったって……っ」


 あれはただ、マットを運んでいただけ。体調の心配をしてくれただけだ。

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