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Memory of Night

第5章 玩具


 大山もそれに手をかけ、二人で持ち上げる。

 腕に力を入れた途端、宵はビクッと全身を震わせ顔を歪めた。


「おい、ほんとに平気なのか?」

「……ヘーキ……っつってんだろ」


 微かに肩を上下させながら答える。

 無機質な振動はずっと続いていて、体はわずかな力を入れることさえ辛いのだ。

 顔を上げると、汗ばんだ肌に髪が張り付いて邪魔だった。

 片手でそれを払うと、大山が自分の方をじーっと見ているのに気付く。


「……なんだよ?」

「え、あ……ごめん」


 大山は、慌てて宵から目をそらした。

 それからもう一度ちらっと宵を見て言う。


「なんか、今日のおまえって妙に色っぽいなー……と」

「はぁ?」

「や、ね……熱っぽいせいだと思うけどな」


 失言だと思ったのか、困ったように笑いながら焦ったようにそう弁解する大山。

 宵はその様子に軽く軽く肩をすくめた。そしてもう一度二人でマットを運ぼうとした時だった。


「……っ!?」


 宵の中の振動が、急に激しさを増したのだ。

 内壁をえぐられたような強い感覚に我慢できず、宵がその場に膝をつく。


「よ、宵!?」

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