テキストサイズ

take a breather

第27章 Turning Up

洗い場で体を洗って湯船に向かうと、湯船の中には既に翔くんが入っていた

「お邪魔します」

湯船に寄り掛かっている翔くんに、そう声を掛けると、ビクッと肩が震えた

翔くんがいる所から少し距離を置いて、ゆっくりと湯船に足を入れる

その間、チラリともこちらを見ない翔くん

体を湯船に沈め、翔くんとの距離を詰めた

「気持ちいいね」

「う…うん…」

翔くんの体に力が入ってるのがわかる

だって、いつもは撫で肩なのに、少し肩が上がってるから…

さて、ここからどうしよう…

翔くんが僕のことを意識してくれてるのはわかった
でもこの様子じゃ、翔くんから動いてくれることはなさそう

キスの時みたいに、翔くんが少しでもキッカケをくれれば、こっちも動き易いんだけどなぁ…

チラッと翔くんを見ると真正面を向いたまま、ほぼ動かない

まずは翔くんの視界に入り込もう

僕は翔くんの視線に入るように、湯船の前方に移動した

「翔くんもこっちおいでよ
山の上だから星空が綺麗」

振り返って翔くんを見ると、顔を真っ赤に染めた翔くんがモジモジしてる

「翔くん?おいでよ」

翔くんの所に戻り、翔くんの腕を掴んだ

「は、はいっ」

緊張している翔くん
どうしよう…可愛すぎて今すぐ食べちゃいたい

翔くんの腕に腕を絡ませ、肩にもたれ掛かる

「ね?綺麗でしょ?」

翔くんを見上げれば、コクっと頷くだけ

「翔くん、のぼせちゃった?
顔、真っ赤だよ?」

翔くんの頬に手を当てると、翔くんがこちらを向いた

瞬きもせず僕を見る翔くん

「智さん…」

僕の名前を呼んだのに、その後微動だにしない翔くん
その表情も微動だにせず真顔のまま、ジッと僕を見つめる

「翔くん?」

「俺……無理みたい…」

「えっ?」

僕、急ぎすぎた?
やっぱり、ゆっくり進むべきだった?
折角両想いだったのに…

翔くんの腕に絡めていた腕をスルリと解いた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ