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take a breather

第1章 Now or Never

「智くんはね、T美大に通ってて、俺たちよりもひとつ年上なの」

「へぇ~、T美大かぁ。芸術家さんなんだね」

「そんな、まだ芸術家なんて言えるほどの作品は作れてないよ」

「そんなことないっ!
智くんの描く絵はすっごい上手だよ?
他の人がなんと言おうと俺は智くんの描く絵が世界一好き」

「ありがとう、翔くん」

翔くんに熱く語られ嬉しくなった。
そんなに俺の描く絵、好きでいてくれてたんだ。

「なんかさ、翔ちゃんが大野さんのこと選んだ理由、わかった気がする」

「え?どうして?」

ニヤニヤするカズくんと首を傾げる雅紀。

「翔ちゃんって壊滅的に芸術の才能ないじゃん」

「うん、まあそうだけど」

「酷い…ふたりとも…」

「ごめん、翔ちゃん。だけど事実でしょ?」

翔くんは肩を落としながらも小さく頷いた。

「人間って、ひとりだと完璧になるの難しいじゃん。
だから、自分にないものを相手に求めるんじゃないかな?」

「なるほど。だから今まで5万という奴らが翔ちゃんに告白したのに、誰も相手にされなかったんだ」

5万⁉やっぱ、翔くんモテたんだ。
だよな、この見た目と性格の良さ。モテない訳がない。

「だと思うよ?
だって、翔ちゃんの周りにはそこそこ優秀な逸材も美人さんもいたけどさ、翔ちゃんには及ばなかったでしょ?だから興味が沸かなかった。
大野さんみたいな芸術家さんは初めて出逢ったんじゃないの?で、惹かれた」

「確かに智くんみたいなタイプは初めてかも。
カズが言うように才能にも惹かれたし。
でも、それだけじゃないよ?智くんのこと好きになったのは」

「翔くんに好きになって貰えたんだから理由なんてなんでもいい。
こうやって一緒にいられるだけで十分だよ。
でも5万かぁ…思ってた以上だな…」

「5万なんて大袈裟だから!
俺、そんなモテてないからね?」

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