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take a breather

第1章 Now or Never

「これからは大野さんの仕事だからね?
翔ちゃんのこと、ちゃんと見ててよ?」

「うん。でも、大学の中は無理だから、これからも翔くんのことよろしくお願いします」

カズくんに向かって頭を下げた。

「智くん…」

「うん。そこは任せて。
って、ことで今日は大野さんの奢りね?」

「え?マジか…」

「カ~ズ、調子に乗らない」

「は~い」

雅紀が軽く嗜めるとカズは肩をすくめた。

そんなカズくんの頭を、雅紀は微笑みを浮かべながらポンポンと叩いた。

「今日は俺がゴチしてやるよ」

「え⁉いいの?まぁくん?」

「うん、いいよ。色々頑張ったからね」

「ありがと、まぁくん」

カズくんが自ら過去の話をし、それを聞くのは雅紀にとっても辛いこと…
でも、翔くんと俺の為にとカズくんは話してくれて、雅紀はその姿を黙って見守っていた。

それぞれがそれぞれを想い合う優しい人たち。
見ているこちらも幸せになれる空間。

翔くんはいい友人に恵まれてるな。

「あ、そうだ。今年の翔ちゃんの誕生日どうする?
当日は大野さんとふたりきりの方がいいよね?」

「翔くんの誕生日?いつなの?」

そう言えばもうすぐ19才になるって言ってたな。

「今月の25日だよ?聞いてなかったの?」

「うん。知らなかった」

「え~!そこはちゃんとチェックしてよ!
じゃないと翔ちゃんあげないよ?」

「カズのモノじゃないだろ…」

「だってぇ、誕生日なんて一年に一度しか来ないのに、そこ逃したら一年後だよ?
翔ちゃんに寂しい思いさせるとこだったじゃん」

そうだよな。これはカズくんが正しい。
もうすぐって聞いてたんだから確認するべきだった。

「うん、カズくんの言う通りだよ。
大切な人の大切な日を祝えなかったら俺も後悔する所だった」

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