テキストサイズ

友達のままがいい

第5章 (過去)社会人

どこまでも優しい康臣さんは、何もすることなく私を抱きしめて寝るだけだった。
付き合って少し経った頃、自然とそうなるようにホテルに行った事がある。
初めてのことにドキドキしながら、康臣さんとだったらと抱かれる覚悟をした。
だけどいざその時になると怖くなって泣くことしかできなかった。
別に何とも思っていなかったことでも、あの時の事がトラウマになって残っていたんだと気がついた。
嫉妬に狂った慶介が私を無理やりに抱こうとしたあの時。
あの直後も普通に付き合いを続けてきたから感じることはなかったけど、その行為に対して怖いというイメージを植え付けられていたことに、その時まで気が付かなかった。
その事を康臣さんに告げると、無理にする気はない、ゆっくりと時間をかけて克服しようと言ってくれていた。
それでも抱かれたいと思う私もいるのは確かで、少し前に私の二十歳の誕生日の時にすべてを欲しいと言われて頷いた。
それなのに、今日もまた恐怖から拒んでしまった。
このまま拒み続けて嫌われたらどうしようとそればかりを考えるようになった。
だけど、その気持ちもある日を境に変わった。
あれほどまでに康臣さんに抱かれたいと思っていた私の心を簡単に壊した人がいた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ