俊光と菜子のホントの関係
第5章 番外編『ワタシと菜子』
にしても……菜子ってば――
(だからって、本気で恋人同士になろうってワケじゃないんだよ? 私と俊光君は兄妹だっていうのは百も承知だもん)
あの時、あぁ言って笑顔で通したつもりだろうけど、一瞬眉を寄せたんだよね、あのコ。
菜子の本音に気づいたら、ワタシまで切なくなっちゃった。
あのコ無理だってわかってても、俊光さんと本気で恋人同士になりたいって思ってる。
はぁー……ホントの気持ちに気づいたと同時に、失恋せざるを得ないって……。血が繋がった兄妹だし、こればかりはどうしようも出来ないよねぇ。
それでも、何かしらの可能性ってあるんじゃないかなと思って、こうして参考に検索してみてるけど……
あ。
〈妹から本気で告白されて気持ち悪い。どうすればいいですか?〉
という相談投稿が目に入ると、テンポ良くタップしていた指が、ピタリと停止させられた。
やだ……俊光さんも菜子の気持ち知ったら、気持ち悪いとか思うのかなぁ?
思わないにしても、今まで可愛がってきた実の妹からマジの告白をされたら、さすがの俊光さんもどうしたらいいか思い悩んじゃいそう。
……あるいは――
(たまにいるじゃん。
性的欲求を満たしたくて、身近な妹に手を出すってヤツ。
だからお前の兄ちゃん、そうやってお前を本気で惚れさせて、いいようにしてやろうって企んでんだよ)
…………いやいやいやいや。
ワタシは一人で、片手をメトロノームのように『いや』の数だけ振って、バカ(山田)の暴言を否定した。
あはは。だから、俊光さんはそんなことしないってー。ワタシまでこんなこと考えてたら、菜子に殴られちゃう。
って、笑い飛ばすも――
ホントに、そんなこと……しないよねぇ?
と、少し疑いの心が現れてしまい、
(高校生の男子って、かなり性欲強いんだぜー)
その心の隙に入り込むように、更なる山田の暴言が過る。
「っ………」
も、もし……もしもだよ?
山田の言ったことが正しかったとして、
俊光さんが菜子の気持ちに気づいたら――