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でも、愛してる

第1章 1

 「うん、楽しかったよ。
  教授がね、わたしの試験を褒めてくれたわ」
 「えっ、テストがあったの?」
 「ううん。
  試しの、実験。
  院生は、実験をやらされることが多いの」
 「そうか。
  でも、褒めてもらえてよかったね」
 「試験は、すこし大胆な発想がいるから、
  失敗が多くて、褒められることはあまりないの」
 「大胆?」
 「うん。
  試験のときは、大胆さが優先かな」
 「そういうことか」
 「いままでの、世界的な発明でも、
  誰も考えていなかったような、
  大胆な発想からうまれたことが多いと、いうでしょう」
 「そういうね」
 「でもね、大胆な発想は、すてることになるものが多いの」
 「99%の失敗があっても、
  あとの1%から、成功がうまれるともいうんじゃないの?」
 「そうなんだよね。
  科学の進歩は、結果からみると、
  とてもはやく進んでいるようにみえるけど、
  そのかげにはとんでもない努力が隠れているいるんだよね」
 「おっ、
  科学者萌絵の、
  名言」
 こんなふうに、清は、よく褒めてくれる。
 わたしは、褒められると、どう返していいかわからないので、「そんなに褒めないで」と言うけど、褒められるのは、やはり嬉しい。
 彼は、容姿のことでは、あまり褒めない。わたしも含めて子どもたちにも、何かしたことや話したことに対して褒める。
 いいことだと思う。
 それも、わたしが、清を好きな理由の一つだ。
 容姿を褒められても、おべんちゃらと思うときもあるけど、彼のように、行動や発言を褒められるのは嬉しい。
 子どもたちも、彼が褒めると、ほんとに嬉しそうな顔をする。

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