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愛のことば

第1章 愛のことば

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 「あの、
  迷われているんですか?」
 「はい。
  出口はどこかと」
 「どちら方面に、
  行かれるのですか?」
 そのとき、直さんが、まじまじと、わたしを見たので、わたしも、あっ、健診のときの方だと、気が付いた。
 でも、わたしを、まじまじと見返すのは、どうして?
 「出口を尋ねただけなのに、
  そのあとのことを、
  考えてくださるんですね」
 と言い、まだ、わたしを、見つめている。
 わたしは、ちょっと赤くなったにちがいない。
 「それは、
  行先によって、
  どこの出口がいいか、
  変わるんです」
 「そうだと思いますが、
  あなたは、
  親切なんですね」
 「いえ」
 「ありがとうございます。
  阪急に乗りたいと思っています」
 「では、
  いい出口まで、
  ご案内しますわ」
 「えっ、
  そこまで、
  申し訳ありません」

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