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愛のことば

第1章 愛のことば

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 「いえ、
  先日、助けていただいた、
  お礼です」
 「助けた?」
 「はい。
  健診のときに」
 「ああ」
 「ありがとうございました。
  あの後、
  みんなで、感謝してたんです」
 「いや。
  あれくらいのことで…」
 「あれくらいを、
  できない人が多いのじゃないでしょうか」
 「私は、
  なんでも、
  すぐ言う、
  とにかく言うようにしているんです」
 「いいですね」
 「いいと、
  思いますか?」
 「はい、もちろんです」
 直さんは、ではと言い、廊下の端に、わたしを、誘った。
 「あなたの名前を、
  おしえてください」
 「えっ」
 「さっき、
  あなたを、
  じっと見ていたのは、
  なんと瞳のきれいな人なんだ、
  と、思ったからなんです」
 「まぁ」
 「なんでも、言うんです」
 わたしは、またすこし赤くなった。
 「ひとみです。
  漢字の一文字の、
  瞳です」
 直さんは、わたしの名札を見て、
 「田中瞳さん。
  きれいな瞳、
  そのままの方ですね」

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