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愛は、メロディにのって

第1章 愛は、メロディにのって

  愛は、メロディにのって

                     双葉 如人

         1

 わたしと望さんは、愛しあったあとの、快い疲れでまどろんでいます。
 CDは、ショパンの遺作となった、ノクターン20番・嬰ハ短調が、かかっています。
 二人の好きな曲です。
 わたしと望さんが知り合ったのは、わたしが教えているピアノ教室に、望さんが訪ねてきたからです。
 「私の年で、
  ピアノを弾けるようになりますか」
 「もちろんです。
  ただ、弾きたいというお気持ちを、
  持ち続けてください」
 「弾きたい気持ち?」
 「はい。
  いまから始められるのであれば、
  厳しい練習よりも大切なのが、
  弾きたいと思う気持ちです」
 「ああ。
  いいことをおっしゃる」
 「いえ」
 「先生のご指導なら、
  私も弾けるようになれると思います」
 「どうぞ、
  先生は、
  おやめください」
 「指導していただくのですから、
  先生です」
 「こんなに若いんですから」
 「年は、関係ありません」
 「そうかもしれませんが…」

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