テキストサイズ

愛は、メロディにのって

第1章 愛は、メロディにのって

         2

 「それでひとつ、
  お願いがあるのですが」
 「はい」
 「ショパンのノクターン・嬰ハ短調を、
  その、
  さわりの部分だけでも、
  ぜひ、弾けるようになりたいんです」
 「お弾きになりたいのは、
  この部分ではありませんか?」
 わたしは、あの有名な旋律を弾きました。
 「そうです。
  先生すごいですね」
 「えっ」
 「ショパンの全曲を、
  覚えているんですか?」
 「いえ、
  この曲は、
  わたしが一番好きな曲なんです」
 「そうですか。
  私も、一番好きなんです」
 いま弾いたメロディを弾くのはそんなに難しくはないが、コンクールや演奏会で弾くには、とても難し曲ですと説明したら、そのメロディだけでいい、2小節か3小節でもいいと言いました。
 でも、鍵盤を押さえる練習だけはしてくださいと言うと、
 「はい。」
 「いつから、始めますか」
 「次の水曜日でいいでしょうか」
 「はい。」
 「私、滝川といいます。
  滝川望です。
  学習塾を経営しています」
 「わたしは、
  宮本百合です」
 「よろしくお願いします」
 「こちらこそ。
  弾けるように、
  精一杯お手伝いします」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ