土壇場の恋・あなたならどうする?
第4章 綱吉と竜二
目が覚めれば、見慣れない天井に見慣れない部屋。
一番最初に思い浮かんだ言葉は
”また、死ねなかった……” だ。
少年は名を ”成瀬 綱吉”という。
竜二達の乗ったセルシオが急停止した
道の傍にあるビルの屋上から飛び降りたのだが……
”ここでこうして目が覚めた”という事は
まだ自分は生きている、という事だろう。
綱吉はこれまで少なくとも5回はそんな自殺を
試みて来たが。
いずれも失敗 ―― 未遂で終わっていた。
リストカットしても・睡眠薬でも・
真冬の海に飛び込んでも、何故か誰かに発見され、
一命を取り留めてしまうのだ。
だから ”今度こそは”と、
踏切に立ち走ってくる列車へ飛び込もうとしたが、
つい自分の身体がバラバラになった状態を
想像してしまって、気持ちが悪くなり、屋上からの
飛び降りに変更した。
でも、結局は死ねなかったのである……。
(とりあえず、今何時なんだろ?)
部屋にある壁掛け時計は8時を示している。
(あぁ ―― 店長に休みの連絡入れてねぇや……)
「とにかく起きなきゃな……」