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Fake it

第11章 Red dream

【翔side】

相葉キック事件の後、俺と智君は殆ど毎日どちらかの部屋へ行って、時間の許す限り一緒に過ごしている。

話の順番がずれてしまうが、あの日相葉君から目が覚めるような天然の一喝を頂いた出来事は、5人の中では「松潤ステーキソース事件」と並んで伝説化しており、長年の膠着状態を打破したミラクルとして、ニノと松本を大いに喜ばせた。

俺が「尻を蹴飛ばされたような感じだった」と述べたことから、5人の中では「相葉キック事件」、「相葉尻キック」、「miracle ASK」などと言い表されており、その後、何か物事が行き詰った時には、「尻に相葉をもらった方が良い」といった言い回しで格言として用いられている。

で。

孝太郎さんの件だけど。

その後、先方から断りの返答が有って、智君を少なからず落ち込ませた。

後に孝太郎さん経由で知らされた話によると、持ち主の方はとても喜んでくれていたそうなのだが、地元の有力者から物言いがついたらしい。

孝太郎さんも知らなかったそうなんだけど、以前にあの辺りに転入してきた芸能人が居て、傍若無人な振舞で地元の方々に散々迷惑をお掛けした上に、数年でアッサリ転出したそうで。

芸能人というだけで反対の声が上がったという。

結局、持ち主のお母さんもまだお若いことだし、地元を離れていた若者が戻ってくる話も出て、民宿そのものは維持されていくことになった。

「そんなに落ち込まないで
免許はあるんだし
海も老後も逃げて行かないよ」

智君の部屋で二人で飲んでた時に言ったら、自分の気持ちを言葉にすることの少ない貴方は、そうだね、って淋しそうに笑ってた。

「やっぱりゲーノージンなんてうさん臭いし
有名な俳優さんとかならともかく
オッサンのアイドルなんか信用できないんだろうな…」

ショボン、と俯いてしまったあの人を抱きしめながら、俺はカハラに必ず家を持とうと心に誓った。

マイアミでもいいし、なんならもっとレアなカオラックとかでもいい。

どこだっていいんだ。

一緒に居られるなら。

今、ここに二人でいることが大事なんだから。

そんなわけで。

当面、俺の目標は、いつか二人で住む家を買うための貯蓄である。

その前に、櫻井サンタとしてはアレも本気で用意しないといけないしね。







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