テキストサイズ

Fake it

第11章 Red dream

【翔side】

今日は久しぶりの二人きりの取材。
俺と智君はお揃いの花柄エプロンを身に着けてる。

「翔君、料理上手くなったよねぇ」

二人でボウルに入った肉を捏ねながら、お世辞でもない風に貴方が言う。

「なってないよ
指示してもらわないと
何していいかわかんない」

だから、貴方がいつも隣に居てくれなくちゃ。

「ふふっ
オイラ、翔君がポンコツぶってるところ見るの大好き」

周囲にいたスタッフさんたちが、智君のセリフに聞き耳を立てて固まるのがわかる。

俺は、こんなのはいつものことです、とばかりに澄まして会話を続ける。

「ぶってるんじゃなくて
本当に出来ないの
知ってるでしょ?」

絡まりついて来る肉を落とそうとして手袋をした指をすり合わせながら言うと、智君が俺の指を握って団子のタネを集めてくれた。

にゅるにゅるした感触が、なんとも、妙な気持ちを呼びさます。

「ふふふっ、絶対に認めないんだから」

笑ってる顔を隠すように下を向いた智君が可愛くて、覗き込んだ時にスタッフさんから声がかかった。

「あー櫻井さん」

「はい?」

「あのぉ、お顔がデレ…」

「え?」

何かついてる?

思わず智君を見る。

智君も、俺の顔を見る。

「なんもついてないよ?」

「だよねぇ?」

二人で顔を近づけたら、シャッターの音がせわしなく連写で響いた。
女性スタッフが「きゃぁっ」とハートマーク付きで声を上げるのが聞こえる。

「あー大丈夫です、そのままでお願いしまーす」

二人で???となりながらカメラを見ると、ああ~と残念そうな声が複数上がる。

何を言われてるのか本当にわかってないらしい智君が、困った顔で俺を見上げたから、大丈夫だよ、って笑いかけた。

俺達には仕事とプライベートの境目は、なかなか付けられないけど。

変わっていくものと変わらないものがある中で、仕事だろうがそうでなかろうが、俺のスタンスは一貫してる。

この人を喜ばせるのは俺の担当。

誰にも譲るつもりはない。

俺を見上げてる智君が、ふにゃっと笑った。

もうすぐツアーが始まる。
















FIN.
※結果は非表示に設定されています
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白いエモアイコン:共感したエモアイコン:なごんだ

ストーリーメニュー

TOPTOPへ