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俺の男に手を出すな

第3章 ガネーシャ

【智side】

翌日。
オイラも翔君も、仕事は昼からだったんだけど。

翔君が局でアリヨシさんに会うのでガネーシャ像を持って行く、と言うから、二人でまずは開店間もないスーパーへ出掛けた。

オイラ、ほんとに専門家じゃないから詳しくないんだけど…。
ただの美術品じゃなく尊いご存在が中に入ってる像だから、単なる物と同じには扱えない。
お帰り頂くにしても、出来る限りのことはした方が良いだろうし。

スーパーで酒と、鯛の刺身と、あと赤飯を買おうと思ったんだけど、翔君がカレーが食べたい、って言うから、インドの神様だし、ま、いいかと思って(この辺オイラも適当)、カレーの材料を買った。

朝からカレーを作って二人で食べて、神様にも酒と刺身と一緒にお供えする。

「神様、一週間お世話になりましたっ!
これでいい?」

「うん」

神様の願いが叶いますように。

オイラも手を合わせてから、真っ白い新しいハンカチで像を包もうとした。

した、んだけど、重い。

像の大きさからすると、有り得ないくらい重い。
接着剤で棚に貼り付けたみたいになってて、持ち上がらない。

あ~…、これは動かせないかも…。

「翔君、ちょっとこれ持ち上げてくれる?
ハンカチでくるむようにして、紙袋に入れるから
なるべく素手で触らないでね」

「わかった、って、あれ?
これ、動かないよ?」

「だよね」

翔君でも無理か。

「え、これ、持って来た時、
こんな重くなかったよ?」

そりゃぁ、サクライの名を持つから、運べたんだ。
サクラは『神座』だ。
神、と書いてサと読む。
座、と書いてクラ。
サクライのイは、居。

磐座(イワクラ)と同じで、桜の木は神様を宿すことが出来る。
そもそも日本の花見は、桜の木に宿った神様に宴を捧げるものだ。

「ん~、翔君、気に入られたんだな…」

オイラは考える時の癖で、つい首筋に手をやる。
神様は、翔君の純粋な気持ちを愛でてくださったんだろう。

「これ、簡単には移せないから、
アリヨシさんには像が重くなって運べないって
そのまま言うしかないだろ」

「ふうん…、大丈夫かなぁ?」

「まだお怒りが解けないのかも、って言っときな」

「うん、わかった」





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