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俺の男に手を出すな

第3章 ガネーシャ

【智side】

「あ~…そうなんだ…」

で、自分は当分インドには行けないから、翔君に押し付けた、と。

やれやれ、中に入ってる神様の像を簡単に人にあげられる筈ないだろ。
罰を当てる神様なんていないけど、ご加護がなくなったら、歯が欠けることもあるだろうな。

「それを俺には内緒にしててさ
恋愛と縁結びの神様だから、
凄く叶うからって言われたの」

騙された、って落ち込んでるわけね。

オイラは翔君の両手を取って、握る。
親指で手の甲をスルスルと撫でた。

「……翔は縁結びをお願いしたかったの?」

「ちげーよ!智君と…
…せめて、一緒に居る時間が欲しかったから、
叶えてもらえるかと思って…」

声が尻すぼみになっていく。

そっか、なるほどね。

オイラはソファの上で翔君と向かい合わせに座って胡坐をかいてたんだけど。

下を向いて口をとがらせて言う翔君があんまり可愛いから、脚も腕も絡めてしまった。

「翔の願いは叶ったの?」

「…うん」

「そうか、ちゃんと、お礼言ったのか?」

「うん、毎日手を合わせる時に言ってたよ?」

「そっか」

後ろ頭を撫でてやる。

寂しかったんだな。
ごめんな。

「アリヨシさん、神様を手放したら
毎日不運の連続だったんだって
車に傷がついてて、ウンコって書かれてて
あと、通販で買った オ ト ナ のおもちゃが誤配達されて
みんなで同じものを食べてるのに一人だけ当たって
ついに神様と同じ場所の歯が欠けたから
返してくれって言われた

ねぇ、ウチも神様いなくなったら
悪いことが起きる、ンッ、ンン…」

起きないよ。
ウチは、神様に不敬になるようなことはしてないから。

「あ…、ん、俺、んふ…っ
俺、シャワー、浴びたい」

「いいよ」

「一緒に入ろ?」

立ち上がって二人で浴室へ向かう。
神様の像に目をやり、心の中で翔の願いを叶えてくださったお礼を申し上げる。

たれ目の神様は、笑ってるように見えた。





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