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俺の男に手を出すな

第5章 お狐さま

【智side】

子供の頃。
とーちゃんの田舎へ遊びに行った夏。

従兄たちと遊んでいたら、何故だか急に、みんなから仲間外れにされたことがあったんだ。

今ではもう、理由も憶えていないんだけど。

確か、オイラが一番遠くから来たからって、他の子より多く小遣いをもらった、とか、そんなことじゃなかったかなぁ。

やきもち焼かれたんだったような気がする。

でも、そん時はわかんないからさ。

ただ、悔しくて、悲しくて、居場所が無くて。

どうしていいかわかんなくて、最初、戸惑ってて。
様子見してたのね。

とーちゃんとかーちゃんはオジサンやオバサン達と話すのに忙しいし、子供は子供同士で遊んでなさいって言われてるのに。

従兄の他に近所の子たちも遊びに来てて、10人ぐらい子供が居たのにさ。
誰もオイラと口をきいてくんないの。

それで、もう、オイラなんて居なくなればいいんだろ、って思って。
オイラ、ばーちゃん家から家出したんだよね。





みんな心配して、ごめんねって言うかな…。
って思いながら、一人でずんずんと歩いて。

でも、きっとオイラが何かしたのかな…。
って思いながらとぼとぼと歩いて。

田んぼを抜けながら山の方へ向かって行ってさ。

そんで、迷子になったの。

んふふっ。
おかしいでしょ?






この子、どうしたんだろう、って地元の人にじろじろ見られるのも嫌だったから、ずっと下向いて歩いてて。

段々と家も無くなるし。

気付けば道路は狭くなっていくし、街灯もまばらで。

人ともすれ違わないしさ。

顔を上げたら、なんか急に夕方になってて。

自分がどこにいるのか全然分かんなくなってることに気づいたの。

オイラ、突然不安になっちゃって。

来た道を戻れば帰れる、って思ったんだけど、戻るのもしゃくでさ。

みんな、オイラのこと嫌いなんだ、って思って。

そのうち泣けてきて。

歩くのに疲れて、立ち止まって一人で泣いてたんだ。





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